夢の言葉と失われた追想【夢の言葉続編④】
「ここに書いてある契約を期限内に全て取ってこられたら、人質は解放してやろう。
…勿論、それまで危害は一切加えない。ちゃんと衣食住を整え、丁寧に持て成してやる。」
有無を言わせない態度のアラン。
怪しさが滲み出ているが…。アカリが何処に監禁されているのか分からない以上、今は奴の言葉を信じるしかない。
「……。分かった。」
返事をするとアランは俺から手を放し、胸ポケットから万年筆を取り出すと、依頼書と共に押し付けるように渡してきた。
夢の配達人になってから、数え切れない程書いてきた契約を結ぶサイン。
依頼人の夢を叶える為の、契約だった。
もしかしたら、色んな意味で最後になるかも知れないサインを書くのが…。人の為ではなく、自分の為だと言う現実に苦笑いが漏れる。
結局俺も最後の最期には、自分の事しか考えられなかった。
”ごめんなさい”…。
……誰に対してか、分からない。
けど、俺は心の中でそう呟いて…。
依頼書に、契約を結ぶサインをした。