夢の言葉と失われた追想【夢の言葉続編④】
私が初めてヴァロン様にお会いしたのは、まだ彼が乳飲み子の頃。
ヴァロン様は、私の家系が代々執事として務める名家の跡取り息子であるリオン様の御子息だった。
穏やかで優しいリオン様は、野心家なお父上シャルマ様とは何もかもが違っていて…。お二人の間には誰から見ても、常に不穏な空気が流れていた。
そして…。そんな二人の間をなんとか取り持っていたお母上様が亡くなると同時に、リオン様は耐え切れなくなったのだろう。
ある日、屋敷を飛び出して行方不明となってしまった。
……。
リオン様は3つ年下であり執事という身分の私にも、いつも屈託無く友人のように接して下さった。
将来は、跡を継いだ彼をずっと支えて行くのだと心に決めていた私にとって…。リオン様のいなくなった屋敷に居場所などない。
そう思って、私は必死にリオン様を捜した。
身分も、名家の跡取りだという事も関係ない。
幼少期に初めてお会いした瞬間から、私の主はリオン様以外あり得なかったのだ。