夢の言葉と失われた追想【夢の言葉続編④】

アルバート様は二つ返事で了解して下さり、リオン様はその私の提案に戸惑いつつも…。陰でこそこそと笑顔を浮かべ、その日が来るのを心待ちにしていた。

例え父親だと名乗れなくても、言わせてあげたかった。

”すごい!天才だな、ヴァロンは!”と…。

幼いヴァロン様が文字を覚え絵本を読んだり、アンナ様が与えた教材を熟す姿を見て、リオン様はいつも嬉しそうに褒めていた。

幸せそうに微笑み合っていたあの瞬間を、一時でも思い出させて差し上げたかった。

……。

年が明けて、約束の日まであと三ヶ月程。
まさか、こんなタイミングで…。
シャルマ様がリオン様を手に掛けるとは、思わなかった。


……いや。
リオン様はきっと分かっていた。
ヴァロン様に会えない事も、命を奪われる時期も…。

全てを分かっていた上で、私をその日に夢の配達人として長期任務に送り出した。

……
………。
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