夢の言葉と失われた追想【夢の言葉続編④】
「ねぇ、アラン。
世の中で、1番悪い事は何だと思う?」
子供の頃、母親が口癖のように問い掛けてきた。
「正解はね、人のものを盗る事。
泥棒さんはね、この世で1番悪い人なのよ。」
幼かったオレには、何故母親がそんな事を言うのか解らなかった。
「…だからね。母さんは猫さんが嫌い。
”泥棒猫”。可愛いフリをして、平気で人のものを奪っていくんだもの…。」
そう言う母親は、いつも笑っているのに、泣いていた。
その、哀しい怒りの込もった瞳の奥を…。
もっと早く理解出来ていたら、あんな事にはならなかったのかも知れない。
……。
ある日。
母親は、オレに何も告げずに……。
この世を、去った。
……
………。