夢の言葉と失われた追想【夢の言葉続編④】

(2)

〈回想〉

物心付いた頃から、母親は常に何かに怯えているように見えた。


「アランは髪の色も、瞳の色もお父様にそっくりね。」

幼いオレの身長に合わせて屈みながら、母親が髪や頬を撫でて嬉しそうに微笑む。
優しい笑顔、大好きだった。


……けど。


「……あんな薄汚い野良猫が生んだ子より、ずっとずっと可愛いんだから。
あなたはリオン様と私の愛の結晶よ、アラン。」

ある日。
そう言った母親の表情は、微笑んでいるのに微笑んでいない。
目の前のオレを見ているのに、見ていない。

子供のオレでも、凍りつくような笑顔だった。


……。

オレの母親は父親とは幼馴染で、生まれた時から互いの親が決めた許嫁。
つまり母親の人生は初めから決まっていて、あの人にとっては父親が全てだった。

そして母親は、何より父親の事をとても愛していたのだ。
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