夢の言葉と失われた追想【夢の言葉続編④】

こんなにすぐに赤ちゃんが出来るとは思っていなかったが…。
最近食欲が湧かなかった事も、この吐き気や胸のムカムカも…。妊娠していると考えれば、全てつじつまが合っていた。


”……叶えるよ。
アカリの夢は、俺の夢だ。絶対に叶える。”

ヴァロンがあの願いを叶えてくれた。
一度そう思ったらそれ以外考えられなくて、思わず笑みがこぼれる。


…が。
背後に感じる人の気配にハッとして、すぐに現実に引き戻された。

自分が今おかれている状況をみれば、妊娠を喜んでいる場合ではない。
身重だからといって、逃してもらえる訳でもない。

むしろ、人質に取られている最中の妊娠。最悪の状況と言っても過言ではないだろう。


「っ……。」

怖くて後ろを振り向けない。


なんとか、守らないと…っ。

咄嗟に赤ちゃんを守りたいと思って、私はお腹を抱えるようにうずくまっていた。
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