夢の言葉と失われた追想【夢の言葉続編④】
幼い頃から娼婦の道しかなかった母は、学問が一切出来ない。
俺が解く問題集に付いている答え合わせの資料を見て、⚪︎と×を付けているだけだった。
つまり、解き方は一切教えてもらえない。
俺には最初についている例題からヒントを得て、自分で考えて解く事しか出来なかった。
母さんが持ってくる問題集の文章には、いつもまだ見た事もない解らない文字も使われていて…。
おそらく、どう考えても当時の俺の年齢にあった課題ではなかったんだ。
…でも、毎日一生懸命熟していた。
母さんは自分の両親を知らない。
棄てられて、大人達にいいように扱われ、本当の愛情を知らずに育った母さんは…。いつも俺への接し方に困っているように見えた。
俺への無茶振りも、母さんにとっては愛情。
何も学問を学ばせてもらえず、文字もあまり読めなければ簡単な計算すら手間取る自分のように俺をしたくなかったから…。
そう、俺は自分に言い聞かせていた。