夢の言葉と失われた追想【夢の言葉続編④】
【数時間後…。】

「…ヴァロン、お待たせ。
さ、今日はどの本を読んでほしい?」

母さんが寝静まって、奥の寝室から出て来た父さんが、俺の目の前にいくつかの本を並べてくれる。

嬉しくて嬉しくて、表情を緩ませながら俺はいつも本を選ぶ。


本当は全部読んでほしい。

…でも。
そんな我が儘を言ったら、明日からはもう読んでもらえないんじゃないかって思って…言えなかった。

仕事と、母さんが出来ない家事も熟して、空いた時間に趣味である執筆もして…。父さんはいつ寝ているんだろう?って思う位動きっぱなしだったから…。

大切な、大好きな父さんとの時間。
俺には一分でも一秒でも貴重な時間だった。


「あ!ぼく、これよめる!
もりで、ことりがたのしそうに、うたをうたっています。…だよね?」

「お!すごいっ!
もう漢字も読めるのか?ヴァロンは天才だな!」

俺が文字を覚えたりする度に、父さんは優しく頭を撫でながら、嬉しそうに笑顔で、褒めてくれた。
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