夢の言葉と失われた追想【夢の言葉続編④】

父さんの書く物語が大好きだった。
幼い俺が惹き込まれたくらいだから、もしかしたら世間一般的には幼稚な話だったのかも知れない。

…けど。
夢に溢れた素敵な世界観。
いくら聞いても飽きる事はない、醒めないでほしいと思わせてくれる、夢の世界が広がっていた。


無愛想で、不器用だけど、時々口遊んでいる歌が上手くて、美しい母親。

穏やかで、優しくて、若いから兄にも見える父親。

俺にとっては大切な両親。


そして…。


「ヴァロン!やった!
お母さんに、赤ちゃんが出来たよ!」

「……あか、ちゃん?」

「そう!お母さんのお腹に、弟か妹がいるんだ!ヴァロンはお兄ちゃんになるんだよ?」

俺の6歳の誕生日まであと一ヶ月程。
父さんが嬉しそうに俺を抱き上げて言った。

嬉しかった。
新しい家族、自分が兄になれる喜び。
暮らしは決して裕福ではなかったが、ここには確かにささやかな幸せがあった。

……
………。
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