夢の言葉と失われた追想【夢の言葉続編④】
「……。え…?」
この状況で何を言っているのかしら?と、呆気に取られる私に、彼は机の上に置いてあるチェス盤を指差して言う。
「チェス、お好きなんでしょう?
そうじゃなきゃ、あんな素敵なチェス盤を所有している訳ない。」
確かにチェスは大好きで、家族や友人に負けた事はない程の腕前で…。自信もある。
でも、私が今言ってるのはそんな事じゃない。
「あ、あのね…、マオ様……。」
「僕の親友にも、チェスの天才がいるんですよ。彼には敵いませんが…。
僕も、決して弱くはないですよ?」
私の言葉を遮って、マオ様はそう言うと…。
意地悪そうに首を少し傾けて、微笑った。
まるで”貴女には負けません”と言いたげなその表情が、私に火を点ける。
「…それは。たいした自信ね。」
フッと笑うと、彼は繋いでいた手を引いて私をベッドから引き起こして立たせた。