夢の言葉と失われた追想【夢の言葉続編④】
何でか、分からない。
ただ、この時の父さんを見たら俺は自然と微笑っていたんだ。
憎めたら、楽だったのかも知れない。
怒れたら、責められたら、泣けたのかも知れない……。
けど、俺には出来なかったんだ。
……ああ、そっか。
だって父さんは、俺にそんな事を教えなかったでしょ?
いつだって、希望をくれて……。
涙を流すよりも、笑顔でいなさいって……。
どんなに虐められても、嫌味を言われても……。
俺に、憎む事なんて教えなかった。
「っ……」
俺から目を逸らして、父さんは家を出て行った。
バタンッ!って閉まる扉の音が、嫌に大きく聞こえた。
……。
暫くして、俺は床に落ちた本を手に取って……。
もう一度読み直した。
何度読んでも、父さんが描いてた、教えてもらえなかった話の続きは分からないけど……。
この本を捨てる事も、嫌いになる事も出来なかった。
だって俺は……。
父さん、貴方の事が、大好きだったから。
……
…………。