夢の言葉と失われた追想【夢の言葉続編④】
「……うん。
そうだよ、ね。ごめんね、母さん」
俺は、床に散らばった食事や食器を拾いながら話しかけた。
「よりにもよって、俺が……。
俺だけが残っちゃって、ごめんね」
分かってる。
母さんが、1番大切なのは父さんで……。
きっと母さんは、俺よりも弟か妹が産まれてくるのを待ち望んでた。
愛おしい父さんにそっくりな、誰が見ても血を分けた親子だって分かる子供が……。ほしかったんだよね?
「……でも。俺、ここしかないんだ。
母さんの居る場所しか、分からないんだ」
俺の知ってる世界は……。
父さんが魅せてくれた夢の世界と、母さんと暮らすこの小さな家の中だけ。
他の世界なんて、知らない。
それ以外で生きていく事なんて、分からない。
「俺、大きくなったら大金持ちになるよ。
誰にも馬鹿にされないくらい、強くなる」
贅沢なんて興味はなかったけど、それが俺と母さんが生きていける道なら……。俺は進む。