夢の言葉と失われた追想【夢の言葉続編④】
背中越しの扉から聴こえてくる美しい歌声に、目を閉じて耳を傾けていると、それだけで癒された。
恥ずかしいけど、俺が女性の綺麗な声に惹かれるようになったのは……。
母さんの声が、好きだったからだ。
母さんは普段、俺の事を”あんた”っ言うからいつか”ヴァロン”って呼んでくれる日を待ってた。
俺はこの命が尽きるまで母さんから離れるつもりはなかったし、これからもずっと一緒に生きていけると思ってた。
だから、きっといつか呼んでくれる。
焦る事はない、って……。
そう思っているのは俺だけで……。
また大切な人との別れの時が、すぐそこまで迫っている事を……。俺は知らなかった。
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