夢の言葉と失われた追想【夢の言葉続編④】
そしたら……。
母さんが俺の近くに来て、微笑った。
真っ正面から初めて見たその微笑みは、胸が締め付けられるくらいに綺麗で……。
「……行きなさい、ヴァロン」
初めて俺の名前を呼ぶその声は、切なく響いて……。
スゥ……ッと、余韻も残さずに消えた。
……。
俺は、ようやく気付いた。
何も出来ない、何も持っていない子供の俺が……。
唯一、母さんを喜ばせられる方法に。
俺、自身だ。
俺自身が母さんを幸せに出来る、1番の”財産”だったんだ。……と。
……なんだ。
何で、もっと早く気付かなかったんだろう。
母さんがお金持ちになれて、大嫌いな俺をもう見る事もなくて幸せになれる。
こんな最善の方法が、
すごく身近にあったんだね……。
「商談成立だ。
……よし、連れて行け」
リーダーの男に命じられて、羽交い締めにしていた奴等が俺に鎖の付いた首輪と手錠を装着させた。