夢の言葉と失われた追想【夢の言葉続編④】

「ハハハッ……!そうか、そうか。
全く、お前は餓鬼の頃から変わらんな。真っ直ぐで、純粋で……。
今も自分の妻の事を、疑いもしないのだろう?」

「……。なに?」

自分の妻。
つまり、それはアカリの事。

俺がアカリを疑う?
そんな事、ある筈のない事。

問い掛けに疑問を感じて聞き返した俺に、シャルマは懐から四つ折りにしてある一枚の紙を取り出すと…。広げて、目の前に差し出した。


「……っ?!」

俺は……。
思わずその紙をシャルマの手から奪い、震える両手で持ちながら見つめた。


まさか、と思う俺の瞳に映る紙。
その紙は、夫婦が離縁する際に互いが署名する書類。

その妻側の記入欄には……。
アカリのサインが書かれていた。


「っ……」

”嘘だ!”
”どんな手を使ったんだ!”
と、叫びたい声が口から出ない。
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