夢の言葉と失われた追想【夢の言葉続編④】
破り捨てたい筈のこの紙を破る事が出来ないのは……。
俺には、解っていたからだ。
サインされている文字は紛れもなくアカリの直筆で、決して見間違える事のない見慣れたもの。
身体と、心が……強張る。
幼いあの日。
父さんに瞳を逸らされたあの瞬間によく似た、感覚。
凍ったように、動けない俺。
そんな俺の肩をポンッと叩いて、シャルマが言った。
「まあ、詳しい事は本人と話せ。
その方が、お前も納得がいくだろう?」
シャルマはそう言うと、扉を開けて……。
誰かを部屋に招き入れた。
ゆっくりと、部屋に入ってきた人物に視線を向けると……。
俺の、1番愛おしい人が……そこに居た。
……おかしいな。
1番、会いたかった筈なのに……。
この状況下では、1番に……会いたくなかった。
今ここに居る彼女を、俺は信じたくなかった。
……
…………。