夢の言葉と失われた追想【夢の言葉続編④】
(4)
【シャルマ別荘】
「……私と、別れて下さい」
私のサインが書かれた離縁の書類を握り締めたまま呆然と佇むヴァロンを、真っ直ぐ見つめながら言った。
視野に入る、ヴァロンの左手。
怪我、してるんだ。
包帯を巻かれたその手が痛々しく映って、本当はすぐにでも微妙な距離を縮めて、歩み寄りたい。
少し、痩せた?
それとも寝不足なんだろうか……。
私を見つめる表情は暗くて、大好きな射るような強い眼差しは……もう見えない。
……。
分かってる。
ヴァロンにそんな表情をさせているのは、他の誰でもない。私なんだって……。
一緒に居れば、共に生きていれば、いつか必ずくる別れの時。
白金バッジの夢の配達人であるヴァロンの妻である以上、突然の死別だってあり得ない事ではないと……。覚悟してきた。
……けど。
それは”今ではない”と、私は思ってしまった。
「……私と、別れて下さい」
私のサインが書かれた離縁の書類を握り締めたまま呆然と佇むヴァロンを、真っ直ぐ見つめながら言った。
視野に入る、ヴァロンの左手。
怪我、してるんだ。
包帯を巻かれたその手が痛々しく映って、本当はすぐにでも微妙な距離を縮めて、歩み寄りたい。
少し、痩せた?
それとも寝不足なんだろうか……。
私を見つめる表情は暗くて、大好きな射るような強い眼差しは……もう見えない。
……。
分かってる。
ヴァロンにそんな表情をさせているのは、他の誰でもない。私なんだって……。
一緒に居れば、共に生きていれば、いつか必ずくる別れの時。
白金バッジの夢の配達人であるヴァロンの妻である以上、突然の死別だってあり得ない事ではないと……。覚悟してきた。
……けど。
それは”今ではない”と、私は思ってしまった。