夢の言葉と失われた追想【夢の言葉続編④】
まだ、出来る事がある。
ちゃんと手術をして、治療を受ければ、ヴァロンは助かるかも知れない。
助かる可能性があるなら、生きてほしい。
私はヴァロンに、生きていてほしいの。
その為なら、私はどんな酷い女にもなれる。
人生で、1番の大嘘を貫き通そうと思った。
「今回の事で、分かったの。
今まで、何とかやっていけるって思ってここまできたけど……。もう、無理。
私にはヴァロンの奥さんを務める事なんて、荷が重すぎた」
決意を固めて、しっかり向き合って、嘘という壁をヴァロンの前で塗り固めていく。
「受け止め切れないよ。
私は、普通の暮らしがほしいだけだもん。
危険な事に怯えながら暮らすのも、難しい事を考えながら過ごすのも……。もう疲れちゃった」
心とは正反対の言葉を吐きながら、私は微笑んだ。
ヴァロンを欺く為には、中途半端な演技なんかじゃダメ。
私自身が傷付く位の嘘でないと、ダメだ。