夢の言葉と失われた追想【夢の言葉続編④】

「……じゃあ。もう、行くね」

「……待って」

これ以上側に居たら込み上げる涙を抑えられそうになくて、この場を去ろうとした私を……。
ずっと黙っていたヴァロンが、口を開いて呼び止めた。


「一つ……。一つ聞かせて?」

「……」

「この2年……。
俺と結婚した、この2年間。アカリは幸せだった?」

「……」

「たとえひと時でも……。
アカリは俺と居られて、幸せだったと思ってくれた瞬間があったか?」

「っ……」

ヴァロンの質問が私の胸を打ち付ける。


幸せ、だったよ。
幸せじゃない時なんて、なかった。

悲しみの後には喜びがあって……。
涙の後には、笑顔があって……。

ヴァロンはいつだって、私を幸せにしてくれた。

ヴァロンと結婚して、夫婦でいられて……。
私は、幸せだった。


「……うんっ。
すごく、幸せだったよ!」

そう言って、私は微笑んだ。
この言葉と笑顔だけは嘘じゃない。
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