夢の言葉と失われた追想【夢の言葉続編④】
「っ……」
「アカリ様、参りましょう」
今にも涙が溢れて震えそうな私の肩を、声を掛けながらそっと支えてくれるディアスさんと一緒に……。部屋の出口をゆっくりとくぐる。
「……アカリ」
「……」
「……。幸せにね。
……ヒナの事、よろしく」
私の居る廊下と、ヴァロンの居る部屋を遮る扉がバタンッと閉まる寸前に聞こえた……。
ヴァロンの、最後の言葉。
”幸せに”、”ヒナの事をよろしく”……。
ヴァロンの願いを心の中で繰り返しながら、私はそっと自分のお腹に手を触れた。
彼は知らない。
私の中に宿っている、新しい命がいる事を……。
……。
もう、振り向かない。
これが、私の選んだ道。
痛い位に締め付けられた心と一緒に、溢れそうな涙と感情も締め付けるように抑え込んで……。
私は、歩き出した。
……
…………。