夢の言葉と失われた追想【夢の言葉続編④】
彼は、その次の日も、また次の日も…。
私を指名し続けた。
でも、何もしない。
自ら触れてくる事も、私が触れようとしても…。
ただ、私に会いに来た。
時には、花束や贈り物を持って。
そして、私に色んな話をしてきた。
一方的に、自分は将来作家になりたいとか…色々。
どんなに鬱陶しい表情をしても、無視していても…。彼は笑って傍に居た。
私には、彼の行動が…意味不明だった。
……。
そんな日が続いて、私は知ったの。
彼が、有名な名家の跡取り息子だと…。
これは好機だと思った。
相手は、まだまだ未完成なただの坊や。
私が本気を出せば、落とせない相手ではない。
だから、私は言ったの。
「大好きよ。」
たった一言の、簡単な言葉。
真っ赤になった彼の唇に、そっと口付ける。
嘘の言葉と、演技。
純情な坊やは、すっかり私の虜になった。