夢の言葉と失われた追想【夢の言葉続編④】
私は娼婦を辞めた。
彼との、生活。
彼は15歳なのに、自分で働いて一人で生活していた。
何でも作家になりたい夢を父親に反対され、自分の母親が遺してくれた僅かな財産で家を飛び出し、この田舎町で生活を始めたとか。
この時になって、私はようやく本当の彼を見た気がした。
娼婦である私の元に通っていた時の服装以外は良い服なんて持っておらず、質素に暮らしている事。
真面目で、優しくて、何より私を大切にしてくれた。
昼間は働き、夜帰宅して食事をすませると作家としての執筆。
いいアイデアが浮かぶと、大きくなり始めた私のお腹を撫でながらたくさん夢で溢れた話をしてくれた。
「!…今、動いた!
そっかそっか、この話面白いかな?」
お腹の子が動く度に嬉しそうに色んな話を考えて、自分で手作りの絵本を何冊も描いて、我が子の誕生を心待ちにしてくれる。
そんな彼を…。
私は次第に、愛おしいと…感じた。
15歳も離れた彼を、愛してしまった。
……
………。