夢の言葉と失われた追想【夢の言葉続編④】
「っ……待って。」
「!……。」
枕元に伸ばされたヴァロンの手を、私は避妊具を掴む前に止めた。
驚いた表情で私を見降ろす彼を見つめて、口を開く。
「……着けないで。」
「!……え?」
「…着けないで、してほしいの。」
「……。」
私のお願いに、ヴァロンは掴まれた手をゆっくり引っ込めると…。そのまま私の頰に触れた。
体温の低い手。
彼が、何かに迷ってるんだと悟る。
寝屋を避けられたり、明け方に帰宅する最近のヴァロンに感じていた違和感に…。
もしかしたら、もう私の事を”女”として好きじゃないのかと考えたりもした。
けど、それは違うと…。
今日久しぶりに一日一緒に居て分かった。
ヴァロンが迷うのは、いつも自分の事じゃなくて相手を想っている時。
それが私の為だと、思ってくれてるからだ。
人にはなかなか言えない悩みを抱えて、最善の道を考える。
秘密を口にせず、計画を実行する。
この人は、根っからの夢の配達人なんだ。