夢の言葉と失われた追想【夢の言葉続編④】

この子は間違いなく、今私が産んだ子。
そして私は、妊娠した時。彼以外の男性とはすでに身体の関係はなかった。
なかった、筈…なのに……。

……。

我が子を抱く手が震える。
産まれて初めて、誰かに嫌われる事を”怖い”と思った。

この子を見たら、きっと優しい彼だって失望する。
自分の子だと、信じてもらえる筈ない…。


「!……この子が、僕とアンナさんの…?」

俯く私の耳に響く彼の驚いた声。

全て終わりだと思った。
これは、心優しい彼を初め強請ろうと悪巧みをした醜い私への罰。

そう後悔した私。

……。
でも彼は、また私を驚かせる。


「すごいっ…!
こんな綺麗な赤ちゃん、見た事ないですよ!」

思い掛け無い歓喜の声に、私が顔を上げると…。
彼は、大好きな笑顔で微笑っていた。

「アンナさん!ありがとうございます!
今日はクリスマスイブだから、きっとこの子は神様にたくさん祝福されて産まれてきたんですね!」

……。
本当に、訳が分からない彼。
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