夢の言葉と失われた追想【夢の言葉続編④】
…だが、ヴァロンは違う。
皮肉にも、両親に棄てられた過去こそがその力を引き出す最大の鍵になったのかも知れん。
親の顔色を伺い、自我を封じた子供。
自分の望むものは手に入らない、と…。
今もあやつは心の何処かできっと思っておる。
リディアがこの隠れ家にヴァロンを連れて来た当初の事を、思い出す。
子供のクセに、口が悪い生意気なフリをして、いつも強がっていた。
嫌われるのが怖いから、人に嫌われる前にワザと自分から嫌われようとする。
”特別”な存在も作らなければ、誰かの”特別”になる事も避けて…。
そんなヴァロンが、リディアに抱いた特別な感情。
初めて特別に想い、想われたいと望んだ。
それが叶わなかった時…。
あやつはまるで、機械のようだった。
完璧に、ただひたすら任務を熟して熟して…。
昇りつめても、どれだけ報酬を受け取っても、少しも嬉しそうではなかった。
ただ、がむしゃらに人の夢だけを叶え続けた。