【完】DROP(ドロップ)



「今の携帯会社から、新しいところに変えるのは嫌?」

「え? 新しい会社って?」

「俺と同じところ」

「でも……お金ないから無理だよー」

「嫌ではない?」

「嫌ではないけどー」



現実は無理だよね。



それに携帯はお母さん名義だし、割引だってしてもらってるしね。

お母さんが簡単に携帯会社まで変えてくれるとは思えないもん。



「じゃあ、これ」



そう目の前に出されたのは、ついこの間発売されたばかりの新機種の携帯電話。

クラスでいち早く機種変更をした友達が自慢げに見せていたのを思い出した。



目が点、その言葉がピッタリなあたしは、そのピンクの携帯を見つめたまま。



「雫?」

「え? あ、これは誰の携帯?」

「雫のだよ?」



はい?

あたしの携帯は、鞄の中に入ってる古い黒い携帯だよ。





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