【完】DROP(ドロップ)
「俺はこれ」
圭矢がポケットから出したのは、お揃いのホワイトの携帯だった。
「え? あ、ごめん。話がよく……」
「これ、あげる。いらない?」
「えぇぇ!? い、いるけどっ」
これのお金は?
これって高いよね!?
いくら、新規だって言っても高いはず。
それに名義変更とかってどうすればいいの?
沢山の聞きたい事を一気に聞いたら、
「大丈夫、気にしなくていいから」
って、この一言で終ってしまった。
『今の携帯解約するの忘れちゃ駄目だよ』
そう笑って歩き出した圭矢の後を、新しいピンクの携帯を握ったあたしは走ってついて行った。
入ったカフェで、新しい携帯を見ると“メモリ001”に圭矢の新しい番号がある。
『俺のも001が雫だからね』
たったそれだけ。
たったそれだけが凄く嬉しくて。
前々から新しい携帯が欲しい!
そんな事を言ってたからかなぁ。
それとも、あたしと電話してたらいつも電波が悪くなっちゃうからかな。
圭矢は言ってくれないから、わからないけど。
こんな事をしてくれたのが、凄く凄く嬉しかったんだ。