【完】DROP(ドロップ)
「声かけよっか?」
「えー、でも女いるよー」
「彼女かなぁ?」
「彼女だったら、普通こんなところに一緒にいないんじゃん?」
――カタン
「雫出よっか」
立ち上がった圭矢が、あたしに声をかけた。
見上げたあたしは、大きく頷いて鞄を持って立ち上がる。
チラッと見た、女の人達は少し残念そうな顔をしながらも、すぐに違う話題で盛り上がっていた。
先にカフェから出てしまった圭矢を追いかけながら、
『彼女だったら、普通こんなところに一緒にいないんじゃん?』
さっきの人の言葉が頭の中を過ぎる。
そうなのかなぁ。
デートって堂々とは、しないものなのかな。
あたしは、有名な誰かを特別好きになった事がない。
だから、あたしが知らないだけなのかもしれないよね。
彼女だったら、どんな風に接して、どんな風に付き合うものなの?
普通の……一般人とのデートとは違うものなの?