【完】DROP(ドロップ)
「あ、圭矢って何歌うのー?」
「俺? 俺は聞いてる方が多いよ」
へ?
笑って言った後、画面に流れるヒットソングに目をやってしまった圭矢。
間が抜けた顔をしたままのあたし。
いやいや、だってカラオケ誘ったの……圭矢だよね?
しかも、あたしと圭矢の2人しかいないんだよ?
それなのに聞き役って……あたしのライブになっちゃうじゃないっ!
――コンコン
ノックされたドアが開き、この部屋の雰囲気とまるで合わないテンションのお姉さんがジュースを2つ置いて行った。
「ごゆっくりどーぞー」
明るい声と共に閉まった部屋のドア。
今は、猛烈にあのお姉さんがこの輪に入って欲しい気分。
初っ端って、何歌えばいいだろ?
やっぱりテンションの高い曲がいいかなー。
あ、でも自信のある曲の方がいいよね。
あー新曲で、テンション高くて、自信があって、ハズさない曲って何だ?
……って、あたし。
何でこんなに悩んでるんだろう。
そりゃ、彼氏と初めて来たカラオケだし。
コイツ下手だな、なんて思われたくないし。
だけど、だけど、何より圭矢が歌わないのが困った。