【完】DROP(ドロップ)
「実はさ、歌手デビューしないかって話があるんだ」
そのまま画面を見つめていた圭矢がサラッと言い出した。
キョクNAVIへと視線を落とそうとした、あたしの目が圭矢を見直す。
「で、同じモデルの陸って人と、この祥平って人と、後1人ダンサーの人の4人グループなんだけどね」
「それって、決まってるの?」
声が震えた気がした。
“モデル”それですら、不安になったのに。
“CM”少し遠くなった気がしたのに。
“歌手”圭矢は芸能界。
その世界へと行ってしまうの?
「うん、多分このままいけばすぐだと思う」
「……そっか」
ここまで来た圭矢に、あたしが言える事なんてない。
顔やスタイルが良い人で、モデルになりたい、芸能人になりたい。
そういう人は山の様にいると思う。
ううん、顔やスタイルだけじゃなくてもだろうけど。
だけど、その中で上に行ける人は運と力と、あとは人を惹き付ける魅力があるんだ。
誰もがソレを持っているわけじゃない。
圭矢は、圭矢にはソレがあったんだよね。