【完】DROP(ドロップ)
「圭矢っ!」
街中で名前を叫んだりしちゃ駄目なのはわかってる。
知っている人は、圭矢の事を知ってると思うし。
だけどね……。
やっぱり言いたかったんだ。
勢いよく振り返った圭矢に、大きな声と精一杯の笑顔で
「頑張ってねっ!」
大きく手も振った。
フッと零した笑みを、キャップのつばで隠しながら
「気を付けてね」
優しく笑って手を振り返してくれたんだ。
今だけ。
今、この時間が止まってしまえばいいのに。
そうすれば、あたしは圭矢の胸に飛び込んで大きな声で
『好き』
って叫べるのに。
どうして
“好き”
って言えなくなったんだろう。
我儘も言いたい事も言えなくて。
圭矢との関わりがなくなるのをこんなにも恐れて。
あたし達のこの先の未来は輝いているのかな?