【完】DROP(ドロップ)
「あ、なら引越手伝いに……」
“行くね”
その言葉は
《あー、引越は事務所でしてくれるって》
「そっか」
“そっか”
になってしまった。
《引越が終ったら、また行ってもいいのかな?》
次に出したい言葉は、出て来ない。
ううん、出ないんだ。
どうして、言えないの?
そう聞かれれば、あたしは
拒否されると恐いから
“重い”
そう想われると恐いから。
それしか答えれないんだ。
『スタンバイお願いしまーす』
《あ、はい》
微かに聞こえた声に反応する圭矢。
《あ、雫ごめんね。また引越したら連絡する》
「あ、うっ、うん。頑張ってね!」
そう言い終わるか終わらないか前に
――プープー
と機械音が聞こえた。