【完】DROP(ドロップ)
-drop story-圭矢
「圭矢ー!」
テレビ局の廊下を歩く俺の後から、弾んだ声で俺を呼ぶ。
ゆっくり振り返ると、同じ事務所で先輩でもある陸さんが居た。
陸さんは、俺より1年先輩のモデル。
年も1つ上。
俺がモデルってかっこいい。そう思ったのは、この陸さんを見たからだ。
だけど、モデルの時とは違って……
明るくて、よく喋って、軽い感じの人だとは、モデルを始めてから知った。
「どうしたんすか?」
「お前、聞いたー? 俺等、歌手デビューするらしいぜー」
「……はい? ……歌手デビュー?」
驚いた俺は、聞き間違いかと思って聞き返した。
「お前、反応ニブイねー。だからー歌手デビューだって!」
そうケラケラ笑いながらも、どことなく嬉しそうな笑顔。
「そう、祥平と、直哉(ナオヤ)とだって」
祥平…直哉?
どっちも知らない。