【完】DROP(ドロップ)
でも馬鹿なあたしは、原付の鍵を取り、携帯を持つ。
玄関の鏡の前で、圭矢のCMのグロスを唇につけた。
圭矢から貰った“プレゼント”
『貰ったからやる』
って貰った“プレゼント”
例え圭矢が買ってくれたんじゃなくても。
例え圭矢が選んだんじゃなくても。
貰ったグロスをあたしにくれたのが……嬉しかったんだ。
たったそれだけの事が嬉しいなんて馬鹿みたいでしょ?
こうやって貰ったグロスをくれるのも。
こうやって時間が出来るとくれる電話も。
こうやって家の事をさしてくれるのも。
全部、あたしだけなんだって。
あたしは、特別なんだって。
それがね? すごく安心出来る時なんだよ?
圭矢の彼女なんだって思える時なの。