【完】DROP(ドロップ)
新しく引っ越したマンションは、セキュリティー番号を入力して中へ入るタイプのもの。
だけど、その番号が変わってないかっていつも不安になってしまう。
今回は、もしかしたら変えてるかもしれない。
新しい番号を教えてくれないのかも知れない。
そんな小さな事ですら不安になってしまうんだ。
部屋の前でチャイムを鳴らし、髪を整えて待つと、少し眠そうな圭矢が出て来た。
「早……」
「えっ? そっそう?」
確かにかなり飛ばした原付。
それは……
少しでも早く会いたくて。
少しでも長く一緒に居たくて。
いつも会って1番初めに言われる言葉は『早い』なんだよね。
中へ入り、歩きながら……拾って行く脱がれたままの服達。
「圭矢ー、せめて一箇所で服脱ぎなよー」
家に入り、歩きながら服を脱ぐのは圭矢の癖。
こんな事を言いながらも当たり前かのように拾っちゃうあたしは、多分自分で自分に酔ってる(笑)
“やっぱり私が居なきゃ駄目なんだから”ってね。