【完】DROP(ドロップ)
「ちょっと待ってて! あれも買って来るねっ」
コンサート会場で人だかりの出来たグッズ売り場。
その大勢の女の子の集団へと消えて行った菜摘。
あたしは、空いてるベンチに座りそれを眺めてた。
“圭矢最高だよねっ!”
“陸の方がいいよっ!”
なんて女の子達がキャーキャー興奮しながら通り過ぎる。
ライブ会場に来てから、ずっとこの光景を目にしてるな。
暫くすると、ポスターを大事そうに持って戻ってきた菜摘は
『もうすぐ売切になるところだったんだよー』
って、買うのを帰りにしなくて良かったと大喜びしていた。
ガヤガヤする会場の中へ入り、席に着く。
あ、結構いい席かも。
2階だけど、真下にはステージがあり、1階の後の方より見やすいかもしれない。
会場が闇に包まれた瞬間、大きな音が鳴り響き、どこからか青や赤、緑の沢山の光が輪を描く。
地面が揺れる位の歓声が一気に上がり、少し落ち着いた頃……叫び声や悲鳴の様な声が次々と聞こえた。
「りーくーぅ!」
隣の菜摘も周りと同じ様に悲鳴の様な声をあげる。
目をキラキラ輝かさせ、身を乗り出していた。
どこからか聞こえる“圭矢”って声援。
そして、スポットライトで照らされた圭矢は、すごく優しい顔で辺りを見回しながら笑っていた。