【完】DROP(ドロップ)
輝くステージで歌う圭矢は、キラキラ眩しくて。
会場全体を包む歌声も、その間に飛ぶ声援も……遠くで聞こえる気がする。
手拍子や、振り付けを踊る子達の中で、あたしはただ……立ち尽くして圭矢を見ているだけだったんだ。
「ねぇ、さっきからこっち見てない?」
「えっ? 本当に?」
菜摘が嬉しそうに言った時。
あたしの後の子が
『今、目合った!』
って喜んだ。
あぁ、そっか。
“私の事を見てくれた”
こうやって、夢を与えてくれるんだね。
こんな広い会場で、目が合うとしたら1階の前列位だよね。
2階なんて目線を送るだけだと思う。
でも、その小さな夢が嬉しいんだ。
私も、あの時……
圭矢と付き合わずに振られたままだったら。
今、圭矢のファンとして喜べてたのかな?