【完】DROP(ドロップ)
「だって……雫、電話もして来ないし、メールも最低限の内容以外しないだろ?」
暫くの沈黙の後、突然圭矢が呟いた。
「え……? それは、圭矢、仕事だからね?」
「昔は、しつこい位に、連絡してきてたじゃん」
確かに。
そうだけど。
それは、私の方に振り向いて欲しいから必死でさ?
もし、圭矢が“芸能人”なんかじゃなかったら、まだしてたのかもしれない。
“芸能人”
それが、どうしても私の事を止める。
駄目だよって。
迷惑かかるって。
「俺が、どんなドラマとかCMとかしてても何も言わないでしょ?」
「しっ、仕事だし……」
本当は、泣いてた。
辛くて哀しくて、嫌で嫌で仕方なかった。
でも、そんな事言っちゃ駄目じゃない。
言ったら止まらなくなっちゃうもん。
そして別れる事になる方が、圭矢の重荷になる方が。
もっと嫌だったんだもん。