【完】DROP(ドロップ)
楽屋に戻った俺は、マネージャーに予定の確認をする。
ペラペラと手帳を開く音がもどかしくて堪らない。
そんな手帳なんてなくても、俺の頭の中に全て入っている予定。
何も予定が無い事を確認すると、にっこりと微笑んだ顔とは裏腹に、急いで支度を始めた。
マネージャーに送ってもらい、家に入ってすぐ取り出した携帯。
電話の相手は勿論、雫。
自分の言いたい事を伝えるとそっけなく電話を切り、携帯を両手で握りしめ、
はぁーっ
と息を吐き出しながら、頭を下げた。
いつも、そう。
俺からかけて、俺から一方的に切る。
俺の予定に合わせて呼び出し、俺の都合で帰すから。
電話をする度に、雫から何か言われるんじゃないかって恐くなるんだ。
『今日は無理』
そう言われたら、次会えるのはいつになるかな。
『別れよう』
そんな言葉を聞くのが恐い。
でも、俺から連絡しなきゃ終わってしまうんだと思う。
忙しくて中々会えない。
電話だって出来ない。
それなのに、こんな風にしか接する事が出来なくなる自分が嫌になる。