【完】DROP(ドロップ)
未だ余韻に浸り、盛り上がっているメンバーを横目に急いで着替えを済ませた。
場の雰囲気を壊すかもしれないけど、今日の俺には余裕なんてなくて。
先に帰るって選択を選んだ。
いつも真面目に頑張って来たのもあって、歌詞を間違えたり様子が変だったりしたのは体調が悪いからだろう、そう思ってもらえて先に帰る事を誰も不信には思わなかった。
携帯を開き、いつもの様に通話ボタンを押す。
ただ、いつもと違ったのは、一方的な電話じゃなくて。
雫から言われた
“行く”
という言葉。
それだけで喜んでしまう俺は、やっぱり雫が好きなんだと気付かされる。
雫が家に来てから我慢出来なくなった俺は……つい言ってしまったんだ。
『俺ばっかりが雫を好きで嫌になる』
そんな言葉を感情的に発してしまったんだ。
普段なら、我慢出来るのに。
演技だって勉強したんだよ?
芸能人だしね。
でも雫だけには。
雫だけは……駄目みたい。