【完】DROP(ドロップ)
「あはっ、強いね……雫」
そう思ったら、今までの事が馬鹿らしく思えて。
自分の仕事への思いの弱さとか。
好き嫌いだけで選ぼうとした、あさはかさとか。
自分で自分が可笑しくて笑ってしまった。
俺は一体、雫の何を見ていたんだろう?
目の前で一緒に笑ってくれる雫のどこを見てたのかな?
これからは、もっともっと2人の時間を大切にして雫の中を見たいよ。
「じゃあ、2人で居る時は、ただの雫の彼氏だからね?」
「え……」
そう言って、軽く交わした唇。
また真っ赤になって焦る雫が可愛くて、つい
「可愛い」
ってクスクス笑ったら、もっと赤くなってしまった。
ただ唇が合わさっただけなのに、こんなに
“好き”
って気持ちが聞こえてくる。
だけど、もっと聞きたいって思った。
今まで言って貰えなかった分を。
雫は真っ赤になるってわかってたけどさ?
いいよね、今だけだから。