【完】DROP(ドロップ)



「あー……うん」

「うん?」

「……雫が帰るって言うから」

「うん」

「……」



帰るって言うから、何?



頬を少し赤くした圭矢は肩までかかったシーツで顔を隠してしまった。



え。

どうしたの?

え。

え……。



もしかして、帰るって言うから引き止めようとしてくれた。とか?

そんな事を考えて、少し赤くなった頬。



あ、でも帰るのを送ろうとしてくれてシーツに絡まったのかもしれないよね。



一瞬、考えた夢みたいな事を打ち消す現実的な考え。



「あたしが帰るって言ったから鍵閉めようって思ったの?」



わざと明るい声で言ってみた。



だって。



会いたい、そう思ってたのはあたしだけだったって言われたみたいで少し哀しかったんだもん。


わかってるよ、わかってるけどね。


少しでもいいから、あたしに会いたいなーって思って欲しかったんだ。


あたしの小さな我儘。

だけど、何でも言って。そう言われたって、こんな我儘言えないよ。



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