【完】DROP(ドロップ)
第10話【見えない心】
「はい、これ制服ね。本当に助かったわ。
今年、暑いからかすぐ辞めちゃう子ばっかりでね〜」
「……はぁ」
「頑張ってね!」
お母さんくらいのおばさんに、背中を叩かれた瞬間、置かれた状況を軽く後悔した。
夏限定の野外ライブ、
新曲のレコーディング。
忙しい圭矢は東京から離れてしまっていて、会えない。
今までだって、何度もあったことだけど、あたしが長期休みの時に重なるのは初めてで。
圭矢の為に空けていた時間は、全く無意味なものとなってしまったんだ。
だから、菜摘に誘われて、バイトする事にしたんだけど。
夏休み限定で、時給もいいし。
業務は、主に棚卸とレジ。
簡単だと思って初めて、今日で5日目。
初日から感じた体力の限界は、筋肉痛となって、あたしの体から悲鳴をあげていた。
菜摘は、好きな人がバイトしてるからって応募したらしいけどね。
流石、行動派。