【完】DROP(ドロップ)
うー、ムカツク!
同じバイトのくせに、偉そうに言っちゃってさ。
呆気に取られたあたしを残して、あたしが頑張って乗せたダンボールを積んだカートを持って店内へと消えてしまった。
1個は、巧が乗せたんだけど……ムカツクー!
バイトを始めて、辞めたい。そう思った理由は、この暑さもあったけど。
暑さで辞める程、根性無しじゃない。
筋肉痛だって慣れれば何とかなる、はず。
1番は、巧のせい。
1年のクラスには何回か行った事がある。
菜摘が好きな人と喋るからって行った教室。
その男の子の隣に巧が居たのは、何回か見た事があった。
だけど、今回バイトが一緒になって、同じ持ち場で。
ほとんど初めて話すに近いはずなんだよ。
なのに、何でこんなに生意気で偉そうな態度を取られなきゃ駄目なわけ?
ここでのバイト歴は、あたしと数ヶ月しか変わらないのに。
でも、菜摘の好きな男の子の友達だから邪険にも出来ないし。
バイトの時だけ我慢すればいい。
そう思ってはいても、毎日みっちり8時間労働だと接する時は多いから辛い。
はぁ~。
圭矢に会いたいなぁー……。
忙しい毎日を送っているらしい圭矢とは、10日以上会ってないんだもん。
たまにくれる電話が唯一の楽しみ。
だけど、長電話なんて出来ないし。
早く帰って来て欲しいな……。
額にじんわりと滲んだ汗を手の甲で拭きながら、仕事へと意識を戻した。