【完】DROP(ドロップ)
でも帰る時間は来て。
急ぎたくないのに、急いでしまう足。
携帯を何回も開いては、閉じての繰り返し。
家につくと夜で、勿論芸能ニュースなんてやってない。
不安に押し潰されそうになって、涙が出そうになって。
我慢して我慢して乗り越えたのに。
朝、そんな我慢を簡単に打ち壊すニュース番組は、トップで芸能人“KEI”と杉下奈央の話題だった。
――あのニュースは本当?
そう聞きたいのに、聞けない。
圭矢に打つメールは、元気なあたし。
――おはよう! 今日もバイト行って来るね! 圭矢も頑張ってねー♪
このメールの裏に、削除したメールがあるんだよ、圭矢。
わかるわけないよね。
だけどね、わかって欲しいんだ。
“あれ嘘だから”それだけでいい。
理由なんて別にいいから、それだけでも言って欲しいよ。
もし、あたしが聞いて圭矢から何の返信もなかったら……。
そう思うと、聞けないんだ。