【完】DROP(ドロップ)
「え? どれ?」
そう言いながら、もっと見えるところに行こうと、あたしに引っ張っていかれた柱から出ようとした。
けど、その足は止まり。
一歩出た足を元に戻し、もう一度あたしと一緒に柱に隠れ振り返った。
「ちょっ……あれ?」
今度は、菜摘が指差した。
うんうん、と力強く頷くあたし。
それを見て、凄く驚いた顔をした菜摘は口をパクパクとさせている。
「……すっごいイケメンじゃない!!!」
「ちょっと、声大きいって……」
あまりの大声に通り過ぎる人が振り返る。
恥ずかしくなったあたしは、菜摘の口を押さえた。
「だって……あれだよ!?」
押さえたあたしの手を、握りながら今度は小声で話す。
だから、一目惚れだって言ったじゃん。