【完】DROP(ドロップ)
第12話【本当の気持ち】
「あ、雫。おっはよー!」
「菜摘、おはよー」
原付を止めて、メットインにメットを入れながら、交わす言葉は何も変わらなくて。
「何ー、朝から元気じゃん。遅番だからたっぷり寝れたー?」
「うん、たっぷり寝たよ」
寝れてもいないのに、寝れたと“また”嘘をつく。
「いいなぁ。私なんて5日連続早番でヤバイよー」
泣きまねをする菜摘の頭を軽く小突き、
「何言ってんのよ、松本君と一緒がいいからって、あたしに早番と遅番変わってって言ったくせに」
茶化す様に笑ってみたり出来る。
「まぁ、そうなんだけどねぇ。流石に眠いわ」
それでも菜摘は幸せそうな顔をしてる。
腕時計に目をやり、
「あ、ごめんごめん。早くタイムカード押しておいでよ、遅刻しちゃうよ」
そう言って、自分の持ち場へと戻ってしまった。
あたしも素早く用意をして仕事へと取り掛かった。
何も変わらない。
周りも、ココも……“あたしも”いつもと同じ。