【完】DROP(ドロップ)
必死に仕事をこなした。
無駄な事なんて考えずに。
だって、そうしなきゃ涙が溢れ出てきてしまいそうになる。
「上原さーん、レジ補助入ってー」
「はぁーい!」
商品の陳列をしていた、あたしにパートのおばさんが声をかけた。
『5番のレジお願いね』
その言葉にレジが相当混んでるのが予想出来た。
普段は3番レジまでしか、開けていない。
それが、5番レジで、尚且つレジ補助。
レジを打つ人は別に居て、その隣で、商品を袋へと入れる係と2人で1つのレジをこなす。
でも、忙しい方がいい。
「レジ補助入ります」
「あ、すんません……っ」
入った5番レジには、巧が居た。
振り返って、レジ補助があたしだと気付くと、切なそうな笑顔を向けたんだ。
ピッ、ピッ、とレジから鳴り続ける音。
『ありがとうございました』
何度言ったかわからない言葉。
1人、1人に向ける笑顔。
気を抜く暇なんてなかった。