【完】DROP(ドロップ)
「はぁー。やっと落ち着いたね」
「だなぁ」
やっと、空いたレジで大きく息を吐いた。
「巧、レジ打てたんだね」
「んー、パートのおばちゃんに捕まってさ。俺苦手だっつってんのにさ」
「あはは、そりゃお疲れ様」
『ごめん……離して?』
あの後、巧は手を握ったまま離してくれなかった。
俯いたまま、何も言わなくて。
だから、あたしも何も言えなくて同じ様に黙ってたんだ。
「だぁー。悪ぃ。俺だせー」
突然、大きな声を出して、その場に座り込んでしまった巧。
驚いたあたしは、巧を見つめた。
「何やってんだか」
独り言の様に呟くと、あたしを見上げ、
「俺、お前やっぱ好きだわ」
頭を掻きながら、視線を左右に揺らし、また真っ直ぐに見つめて
「いつでも変わりになってやるよ」
そう言われたんだ。