【完】DROP(ドロップ)
何も言えなかった。
だって、何であたしにそこまで言ってくれるのかもわからない。
何がいいのかもわからない。
それなのに……。
勿体無いよ、そんな言葉。
あたしには、勿体無い。
だから、何も言えなかったんだ。
そこで、何を言っても嘘に聞こえてしまいそうで。
軽い言葉になってしまいそうで。
「っと。それだけ。悪かったな、引き止めて。まぁ、何だ。んー……今まで通りって事で」
急に口数を増やして話す巧に、やっと一言だけ。
『ん、ありがと』
それだけ言えたんだ。
「瀬戸君と、上原さん、そのまま休憩に入ってー」
パートのおばさんに言われ、休憩室へと向かった。